「田舎に住もう」

1996年3月30日
小 原 茂 幸

仕事がら、時々東京へ出て行きます。
東京の豊かさや、活力には目をみはるものがあります。
かつて、私が東京で学生生活をしていた頃よりも
はるかにきれいになりました。
戦後半世紀が経ち、 先人たちの知恵と汗と努力の結果が、
今日の東京を日本を築き上げたのです。

東京、それはとっても魅力的な都市です。
しかし、都市の持つ魅力は、人の心を昂揚こそすれ、
人の心を和ませることは少ないようです。

高速湾岸線を西に向かう時
臨海副都心に林立するクレーンの多さと
次々に建設される巨大な建造物を見る時、
その巨大なエネルギーに驚かされるとともに、
排気ガスと熱気に包まれて、
今にも爆発するのではないかとそら恐ろしく感じる時があります。
そして、「ここは人間が住むところじゃないな。
ここで子供を育てたくはないな。」と感じるのです。

東京をもっともっと住み良い街にと言いますが、
何が何でも東京というのは困りものです。
極端に人を集めた異常さがバブルを生み出し、
そして破綻を招き、さらに住みづらくしています。
一坪数千万円の土地に住み、
発展途上国の人々の月収一月分を一食に費やすというのは何か変です。
かつて、地方を住みにくくすることによって、
都市が栄えました。
地方の若者たちは住みにくい田舎を離れ、こぞって東京をめざし、
そして、戻って来たものはわずかでした。
今、東京はもっともっと住みにくくするべきです。
そして、多くの人々が東京を離れ、
地方に住み、
一都市集中の弊害を避けるべきです。

都会を離れ地方に住みましょう。
大地の上に、しっかりと足を付けて生きてみましょう。
自ら食する物の一つでも、
自らの手を土に触れる事によって手にし、
この星では、
人類は他の生物とも共存していかなければならないことを認識し、
四季のゆったりとしたリズムの中で、
自らもまた、自然の一部であり、
やがては自然の中に帰するものであることを理解しましょう。

無駄なエネルギーを使い、
限りある資源を浪費し、
ひたすら、過剰に物を生産し、
地球環境を汚染し、
お互いがお互いをサービスしあい、
家族との語らいの時も奪い、
ひたすら豊かさを追い求める先には
いったい何があるというのでしょう。

大地に根を張り、風の声を聞き、雨に打たれ、漆黒の闇に眠る。
かつて、人々は物は無くても心は豊かでした。
今、人々は満ち溢れるものの中で、心の孤独にさまよっています。
それぞれが生活をする場において、物を作りあげる芸術家でありました。
人間が、動物たちと、神神と共存するところから文化が創造されたのです。
人間が居住する場所には、
水が流れ、日の光があたり、
野菜や米を作ることができる土地が必要なのです。
本当の豊かさとは何なのでしょう。

世界最高水準の技術を持った国が、
世界最低水準の賃金の国で、
世界最高水準の製品を作る時代になりました。(H.A.Kissinger)
メイドイン東南アジアの部品を使用した20数万円のパソコンで
地方からインターネットで
世界に向けて発言できる事になりました。
真の豊かさとは何かを考えて
地方からの風を送り続けたいと思います。


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