「人生の縦糸と横糸」

1996年8月30日
小 原 茂 幸

目に染みるような山の緑、
涼しげな水のせおと。
にぎやかなセミの鳴き声。
久しぶりに河原でバーベキューに興じました。
昨年の地域の分館活動をいっしょに行なってきた方々12名と
その子供たち5名ほどが加わって、
8月の第4日曜日に、
大田切川に集合しました。
二十歳に近い女性から五十代の男性までの集まりです。

連日の晴天続きで、水量は少なく、
風もなく、取って置きの休日でした。
水は透きとうって10cmほどのヤマメが見えるほどです。
大田切川は駒ヶ根市と宮田村の境を流れる川です。
水源は中央アルプス、花崗岩の丸い石が、ごろごろしています。
かなり以前から護岸工事が進み、堰堤がいくつも築かれています。

私は大樹と大知を伴っての参加でした。
様々な職業の人が集まっています。
会社員、経理事務所職員、診療放射線技師、銀行員、団体職員、主婦、等。
ちょっとした、異業種交流です。
昨年は地域の分館活動として、
歩け歩け大会(自然探索会)、敬老会、スポーツ大会、盆踊り大会
運動会、講演会、お料理教室等の企画、運営をこなして来た仲間です。

今日は思い出会を兼ねての集まりです。
設備屋さんがガスこんろなどの設定をしてくださり、
女性陣が買い出しをして、
それぞれ思い思いの食べ物を持ちよりました。

様々な日常の会話に、専門家の話が加わり、
焼き肉とビール、そしてワインの味に舌鼓を打ちます。
利害関係が無い者同士の気楽なおしゃべり。
年齢を超え、世代を超えて、
気のおける人たちとの他愛もない会話。

子供たちは河原で、水遊び。
ズボンの裾や服の袖をぬらしています。
夏休みもお盆休みも無く、
子供たちといっしょの時間が取れなかった私にとっては、
ちょうど良い機会でした。

人間は社会的な動物です。
人と人との関わり合いの中で生きています。
一番小さな社会の単位が家族だとすれば、
次には地域、そして職場、あるいは市町村、県、国家、民族、そして人類。
いずれにしても、人は一人では生きてはいけません。
一人の人間の成長の過程を縦糸とすれば、
横糸は生きてきた場所であり、社会となります。
会社の経営者ならいざ知らず、
職場だけに身を置いた生き方はさびしいものです。
好きな仕事に身を打ち込み、
家族を大切にし、
さらに余暇を充実させてこそ、
調和がとれた人生ではないでしょうか。
余暇は地域社会との関わり合いや、自己啓発の時間です。

アメリカ合衆国では無数のボランティアの活躍がめざましいといいます。
一生懸命職場で働くとともに、
地域で社会奉仕に活躍する。
そこに彼の国の底力があるように感じます。

人は一人では生きられません。
「人」という字は一人の人をもう一人の人がささえあって作られています。
自分の財産や、権力や、地位にキュウキュウとして、
とらわれている人々が増えています。
あるいは自分だけの世界にこもり、
気の合わない人々を無視、もしくは排除しようとする人々も増加しています。
大切なことはチームワークではないでしょうか。
夫婦の、家族の、地域の、職場の、市民の、県民の、国民の、地球人の。
それぞれが仲間です。
今この時代を、この瞬間をともに生きている仲間です。
自分以外の他人との関わり合いを大切にしてこそ
生きる甲斐もあるというものです。

それぞれがそれぞれの縦糸の中で
横糸をより充実させて、
しっかりとした美しい布を織り上げていきたいものです。

男性であれ、女性であれ、
やりたい仕事があって、
それに打ち込めればそれが一番幸せかもしれません。
そして、仕事でも奉仕活動でも、一人でできることには限りがあります。
様々な人が集まって、
それぞれの力を結集してこそ、
より以上の成果が生まれるものです。
さらに、
せっかくこの時代のこの場所に生まれて来たのですから、
一木一草でも育て上げ、
この世界の役にたてたならばと思うこの頃です。

豊かな自然の中で過ごした4時間ばかりのひととき。
一昨年には知りえなかった人々。
職場での充実感とは趣を異にする楽しいひとときでした。


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