結婚するお二人に

1996年11月23日
小 原 茂 幸

ご結婚おめでとうございます。
お二人の新しい門出を祝して、
一筆したためます。

幸せそうな二人を思う時、胸が熱くなるのを感じます。
悩み、迷い、立ち止まり、寄り添って、
ここまで来られたことでしょう。
人生の少しばかりの先輩として、
ちょっぴり助言をさせていただきます。

結婚まさに晴れ舞台ですね。
今が一番幸せな時かもしれません。
この幸せをずっと続けるのも、
今だけにしてしまうのもお二人しだいかもしれません。
恋愛は、一つの小さなテーブルをはさんで
見詰め合っているようなものです。
しかし、結婚は手に手を取って、
一つの方向に共に歩き続けることです。
苦しい時も、楽しい時も、寂しい時も、
嬉しい時も、常にいっしょです。
たとえ、時間と空間が離れていたとしても、
心は一つです。
二人が歩む道は決して、広く快適な道ばかりとは限りません。
花に囲まれ、たくさんの仲間に祝福される道もあれば、
でこぼこ道もあります。
いばらの道もあれば、泥んこの道だってあります。
嵐の夜を歩むこともあれば、凍てついた白路を進むこともあります。
あるいは道無き道をさ迷うこともある事でしょう。
しかし、一人ではありません。
いつも二人いっしょです。
ある人が、どんな人と結婚したいのかと問われて言いました。
「いっしょに道草してくれる人がいいな。」と。
そうです。
いつもいっしょなのです。
幸せはもらうものではありません。
与えるものです。
そして、感じるものです。
愛もまた、もらうものではありません。
与えるものです。
二人で、創り上げていくものです。
「その人が私のために何をしてくれるのか」を問うのではなく、
「その人のために私は何ができるのか」を問うべきです。

思い出してください。
初めての出会い、
ふと心をよぎった不思議な気持ち。
好きになるといつも心の中にその人がいます。
やがて、できるだけそばにいたくなります。
そして、触れてみたくなります。
手のぬくもりを感じると、身体全体を抱きしめたくなります。
そして、一つになって解け合いたくなります。
いつもいっしょに居たいのです。
その人のためなら何でもしてあげたくなります。
愛は二人で作り上げるものなのです。
だから、愛は奪うものなのかもしれません。

貴方しかいない。
他の誰よりも、他の何よりも、
地位も、名誉も、財産もいらないから、
貴方だけが欲しい。
愛は他のすべてを捨てても奪うものなのです。

男の本質は子供だと思います。
女の本質は母親だと思います。
そして、あらゆる男性は遺伝子の中に、
種を増やすことを義務づけられ、
女性は新しい命を造り育むことを義務づけられています。
女性が妊娠し、出産する時、
男性の大きな力が必要です。
食糧を確保し、外敵からも守られなければなりません。
そこには強い絆が必要なのです。

釣った魚に餌はいらない。
確かに食べるための魚にはいらないものです。
しかし、人間は魚ではありません。
お互いに与えあい、励ましあい、甘えられることが必要です。
結婚はゴールインかもしれませんが、
これからが始まりです。
新たな旅立ちです。
かつて、米国の西部開拓時代、
結婚と同時に幌馬車で、西に向かったカップルがたくさんいました。
まさに人生は旅であり、
二人はお互いに連れ合いだったのです。
今の多くの日本の若者のように、
平安と安定を条件に結婚する若者と大きな違いです。

そして、「愛する」とは「生かす」ことかもしれません。
その人が本当にその人らしく生きられること。
かけた茶碗も捨ててしまえばそれまでですが、
植木鉢にして生かすこともできます。
倒れた木も板にして、棚になったり、柱になって生かされます。
同じ道を歩くからといって、
何から何までいっしょである必要は無いはずです。
それはかえって無理が生じます。
男であれ、女であれ、やりたいことが有って、
そのやりたいことができることが一番幸せなことではないでしょうか。
(やりたいこと、それが破壊や消費や安楽であっては困りますが、
できれば創造の中に、それを見つけたいものです。)
男性のために女性が犠牲になる時代は終わろうとしています。
お互いがお互いの自己実現のために尊重しあうこと、
協力しあえる二人であることが大切です。
1たす1は2にならないのが、結婚です。
共稼ぎの経済力においても、体力においてもです。
お互いに補いあい助け合うことが必要です。
同じ道を歩く仲間なのですから。

しかし、この人しかいないと思って結婚をしても、
今の彼女よりもさらに素敵な彼女に出会うことも度々あります。
同様に、今の彼よりももっと素敵な彼に出会うことだって多いものです。
その時、大切なことは、
二人で過ごしてきた時間と、
二人が共有してきた空間の重さと質です。
これは何事にも代えられないものです。

この時代を共に生きる同志として、
出会い、愛し合い、人生を共に旅することから、
できれば、この世界に一木一草でも捧げられる人生でありたい。
お互いに刺激しあい、響きあって、
一日生きれば、一歩づつ共に成長しあえるようになりたいものです。

それから、もう一言。
人間は寂しがり屋の動物です。
お互いに寂しい思いをさせないように心がけてください。

これから結婚するお二人に、
心からの祝福とすばらしい旅路をお祈りいたします。
ご結婚おめでとうございます。
そして、
幸せな家庭とすばらしい人生であらんことを。


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