教育機関(食農教育)におけるガーデンファーム

駒ヶ根ガーデンファーム構想への提言―その6
2001年11月16日、その後加筆
小 原 茂 幸

ガーデンファームとはガーデニング(庭)とファーム(農園)による村興しです。
一戸一戸の家庭(農家)が庭と畑を美しく整備する事により、
地域全体に美しい景観を創造しようとする運動です。
自然のサイクルの中で生き、他の生物との共存を図るものです。
美しさには人を惹きつける力があります。
可愛らしさには人を癒す力が生じます。

人間は生きていくために食事をとらなければなりません。
栄養学的見地からの食に対しての正しい知識と、
「安全な食」に対しての認識を育み、みずから食するものを、
みずからの手で育てる体験は、極めて重要なものだと考えます。
消費者が「食」について、みずから学ばなければ、
自分の命が危険にさらされる時代です。
食料自給率の極めて低い日本では、
食の生産現場がますます見えにくくなりつつあります。
成長ホルモン剤、抗生物質、防腐剤、合成着色料、合成甘味料、等など
個々の物質は安全だといわれていても、
複合して摂取したり、継続的に取得した場合の安全性は、まだまだ未定です。

更に12歳までに食した味が、
生涯において「おふくろの味」として継承されるのであれば、
この時期に「本物」をどれだけ食するかが大切になります。
ところが現代においては、感度が優れている若者においてすら、
人工甘味料などによる味覚音痴が増大しているといわれます。

赤ちゃんがお腹が空いて泣いています。
お母さんがとんできて、抱き上げておっぱいをくれます。
赤ちゃんはお母さんの目をしっかり見つめて、
この人は私にとって大切な人だと記憶していきます。
赤ちゃんがおしめを濡らして泣いています。
お母さんがとんできて、おしめを変えてくれます。
赤ちゃんはお母さんの目をしっかり見つめて、
この人は私を気持ち良くしてくれる人だと認識していきます。
子供にとって「食事」は愛情を理解するたいせつな場です。
子供のためにと、メニューを工夫し、
手によりをかけて料理を作り、一緒に食べる食事。
家族みんなで食べる食事の何と美味しい事でしょう。
ところが最近では、
赤ちゃんがお腹をすかしていれば、
布団に寝かしたまま哺乳ビンを口に加えさせ、
吸収率の高い紙オムツでおしめの数を減らし、
買ってきたスーパーのお惣菜に、チンして解凍した料理を並べるだけ。
家に包丁も無ければ、まな板も無い家庭が増えているとか。
そして「孤食」。
食事の相手をするのはTV。
朝食に菓子パン。インスタントラーメン。
お昼はコンビニのサンドイッチやおにぎり。
夕食はコンビニのお弁当やおでん。
四季の変化をコンビニ弁当で感じる都会人。
手をかけなければ、人間も農産物も育たないものです。

生き物は他の生き物の「命」を頂いて生きています。
「いただきます」とは、他の命をいただくことだといいます。
新しい命を育くむ農業は、
命の尊さを知り、「人道」を育む基になると思います。
効率と採算を考えた農業が歩んできた道は、
農薬と化学肥料と配合飼料の多用です。
大型化とエネルギー消化型の農業でした。
同一品種を大量生産する事は価格の暴落を招き、
冬にさくらんぼを実らせるためには莫大な油の燃焼が必要です。
スイスでは航空燃料を使って運び込まれる野菜は、
有機野菜として認定しないそうです。
「地域自給」、「地産地消」を推し進めれば、
むやみな価格競争や価格暴落から決別する事ができます。
何よりも「安全」な食物を提供できます。
野菜や果物ばかりでなく、
家畜を飼育する事は生物の生き様を見ることになります。
赤ちゃんの誕生は命の不思議さを認識させ、
可愛らしさは人を癒す力になります。
無用な殺生を戒め、命の尊さを学ぶ事でしょう。
また、ゴミ問題も大きな課題です。
発酵食品やバイオマス。
人間も生物の一つである以上、
自然のサイクルの中で循環する仕組みを破壊してはならないのです。

ガーデンファームは地域に連帯の場を創造します。
地域に学び、地域を理解する中で、
「地域の子供たちは地域で育てていくのだ」という、
かつては極当たり前の事を再認識する場にしたいと考えます。
人間は社会的動物です。
集団活動によって、
個人の権利を主張するためには、
個人の義務を果たさなくてはならないことを学ぶ場になりうると思います。

文部科学省は「総合学習の時間」の中で、自然体験・農業体験を推進しています。
自然を観察し、自然の中で遊び、自然を知り、自然と共生する。
地方が都会の子供たちを引き受ける事によって、
自然に対する再認識を深め、
「食」に対する真の消費者教育と、
生物としての「人間」を意識し、
生きる力を増大させる事でしょう。
生産者が消費者と直接会話をするとき、
「おもてなし」の真の意味を理解する事でしょう。
お客様の顔が見える営業をすれば、
やりがいや生きがいが倍増する事でしょう。
さらに都会の学校との交換留学や体験学習の場が
地域における新たなコミュニティーの創造の場ともなることでしょう。

ガーデンファーム、
世代を越えて価値観を共有する事の重要性が、
新しい文化を育み、新しい世紀を創造すると考えます。







目次へGO BACK

お読みいただきまして
たいへんありがとうございました。
このページをご覧になった
ご意見、ご感想などお気軽にお寄せください。

PINE HILL Mail: ohara@komagane.com