危機をチャンスに


伊南地域合併によせての提言―その1
2003年4月8日
小 原 茂 幸

二つのアルプスを望む伊那谷は、
四季を通してやすらぎと潤いを与えてくれる地域だと感じます。
ところが今、この地に生まれた子供たちが、
大学を卒業して故郷に帰りたくても、職場がなく、
戻れない時代になりつつあります。
経済と情報のグローバル化の中で、
産業構造が大きく変わろうとしています。
「安全で快適な住環境の創造」を最大の目的とすれば、
雇用の創造こそが、これからの最大の課題だと感じます。
そのための基盤整備が必要な時代です。
市町村合併も、地球的規模で考えて地域で決定する時代ではないでしょうか。

21世紀は環境の時代だと言われています。
環境の時代とは、すなわち農業や林業の時代です。
農業や林業を基盤として、
食糧とエネルギーを確保し、
美しい農村風景を創造する事によって安らぎの空間を創造する事が可能となります。
駒ヶ根市にはかつて「田園都市構想」の概念がありました。
物を生産して財政を賄うことが困難になりつつある今、
人を集客して雇用を創出する方法を模索する時が来たと考えます。
「美しさ」には人を惹きつける力があります。
恵まれた自然環境の中で、
四季を通じて「美しさ」を演出する事によって、
知名度を高め、一年を通して集客力を向上させる仕組みが考えられます。
人が集まれば活気が生まれます。
中央アルプスには年間30万人が訪れます。
この観光客をこの地に滞在させる「仕組み」が求められています。
「何時来ても、幾度来ても、感動!」する「仕掛け」が求められています。

さらに、様々な力をひとつの方向に整流する事によって、
食とエネルギー及び廃棄物に関して、
地域自給、地域処理の循環型社会の構築が可能になります。
大量生産、大量消費、大量廃棄のシステム自体が問われている今、
地方が生き延びる道も変わらざるをえません。
そのためには地域において、共通の目的を持ち、
農業、工業、商業などの方向性を整え、
駒ヶ根市だけでなく、
飯島町、宮田村、中川村など、エリヤを拡大する事によって、
多様性が広がり、
ネットワークを組むことによって、
地域全体での活力の向上を図ることが可能となります。

地域整備を考えるとき、
1.自然環境、2.交通環境、3.医療環境、4.教育環境、5.ショッピング環境が
重要なポイントだといわれています。
しかし、雇用がなければ、生活の安定が図れません。
魅力的な住環境を創造する事によって、
人を集客する力が生まれ、新たな雇用を生み出す。
時代の要請に応じて生産物に付加価値を加え、
生産者が消費者と直結した仕組みを継続的に創造していく。
合併による行政のスリム化と平行して、
自立した財政を構築する手段を明確に打ち出すことが必要です。

一つのテーブルに祖父母が居て孫が居る。
かつて当たり前の生活の姿が見えにくくなりました。
しかし文化は親から子へ、子から孫へと継承され、
創造されるものでなくてはなりません。
それぞれの地域で長年培われてきた伝統と、存在意識を重要視し、
その多様性をネットワークする中で、そのエリヤは更に活力を増すものと考えます。
地域造りは人造りからといわれます。
地域における、民・産・官・学が協同し、
地域のアイデンティティーを見なおし、
多様性をネットワークすることの中に、
21世紀を生き延びるキーワードがあると考えます。


(「新市将来構想検討委員会」への提言に一部加筆)







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